てけけ日記

フィックショーン!

ぷにぷにした黒い玉

–電話–

「先月のサークル後の帰り道だったっけ?そう、そのはずだ。俺はそん時ほろ酔い状態で道端に黒くて丸い何かが落ちてんの見つけたんだ。で、変にテカッてやがるから気になって拾ってみたんだ。」

「道に落ちてるもん拾うなよ・・・。」

「まあ、いいだろーが、別に変に汚かったわけでもなかったから。で、その黒いのさわり心地がすげーいいんだよ、ぷにぷにしてて、たまらん!辛抱ならん!って感じ。俺、いいもん拾ったと思って家に持って帰ったんだよ。キッチンで洗ってきれいにして。ほら、洗ったから汚いとかもう言うなよ? で、なんだっけ、そう、それで意外にすげーきれいな色してんだよ、これがな。黒に少し紫がかってて、大きさはだいたい手のひらサイズ、それで布団に入って一晩中それを触ったり見てたりしてたわけよ。」

「へえ、そうなんだぁ。」

「もっと興味持って聞けよな。けっこう大事件なんだよ。それでそいつをその晩じゅうずっと揉んだんだよ、ほら、俺一度だけ、元カノのおっぱい揉んだことあんだけど。そのスーパー感動エピソード前に伝えたじゃん?手に神が宿ったって。あれよりも感動したね、俺にはもうおっぱいは必要ない、無敵だって思ったよ。」

「お前のシモを使えば最高の表現力を繰り出せる点は畏怖に値するわ。」

「おう、もっと崇め奉れ。で、その次の日も早起きして、朝、家を出る時間までずっと触った。学校行ってる間は触らなくていいやって思って家に置いてきたんだけど、これが間違いだった。学校で手が寂しくて寂しくて、あのぷにぷにしたやつを触りたい!触りたい!って心が叫んでたんだよ。もう授業に集中どころじゃなかったね。頭で何度も触った感覚を思い出してた。おっぱいなんかより100倍夢中になってしまったんだよ。」

「怖いな、なんかその、黒いの。マンガ読むのやめたわ。」

「読んでたのかよ、真面目に聞いてくれよ。それで、その日はサークルにも行かず、家に帰って、そいつを触りまくったわけ、一人暮らしなの知ってたっけ?誰にも盗まれる心配はないわけ、多分家族の誰かが触れたら取り合いになるからな、あれは。それで一晩中ずっと触ってた。学校の課題があったから左手で触りながら課題をやったよ、片手でキーボード入力って難しいぜ。」

「なんか俺の中でも魅力をまとい始めてきたんだけど、その玉。そんなに触りたくなるのか?」

「すごいぜ?盗られるから触らせてやんねーけど。それでその日からその玉を学校に持っていくようになった。変なもの握ってるの人に見られるとなんか恥ずかしいから、トイレとか、一人になるときに取り出して触った。触るとなんだか心の平穏を保てるような気持ちになってな。でも気が付くと30分経ってたなんてこともあって大変だったぜ?トイレで腹を壊し切ったやつとか呼ばれたからな。大腸がミジンコレベルとか言われたわ。」

「ははっ、まあでも、頭はミジンコレベルだろ」

「やかましいわ、それで、聞いてくれよ、これが大変でな。どんどん触る癖が悪化して、大学に行かなくなり始めたんだよ」

「はぁ?マジ?学費払ってる親に謝れよ。」

「いや、あの玉の魅力はやべえんだよ。朝起きてから大学行く時間になってても触ってて、あと五分だけ、いやあと五分。とか。どんどん時間が増えていって結局一日が終わってたなんてこともあった。」

「お前、留年するんじゃないの?勉強好きで結構頑張ってるイメージあったのに。」

「なんか・・・逆らえなかった。時間がみるみるうちに玉に飲み込まれていく感じがしたよ。焦ったけど、不思議とやめられないんだ。」

「もしかして、今も触ってんの?」

「うん、右手に持ってる。おれ、この玉をよく調べて、複製かなんかを作って世の中に売り出そうって考えてるんだけど。いいアイデアだと思わない?」

「いや、話聞いたところだと、俺は欲しくないわ、なんか気持ちわりぃし・・・。」

「ええ・・・。手伝ってほしかったのに、この玉調べようにも玉に夢中で時間が取れないんだよ。」

「ん、でもなぁ。それより大学の単位は?大丈夫そうなのか?」

「いや、ここ一か月は行ってないし、課題も出してない、これから行くつもりもあんまりないかも。そんなことよりさ、玉の画像送るから調べてみてくんない?」

「うーん、お前、その玉今捨てろ。すぐだ。」

「え?何言ってんの?やだよ。これから調べるんだし。」

「だめだ。すぐ捨てろ。」

「絶対に断る。というか無理だ。捨てないし、だれにも渡さない。捨てれないが近いな。俺の生活に溶け込んだんだよ。携帯とかといっしょ。お前だって今すぐ携帯捨てろって言われて捨てないだろ?」

「人間は携帯を使っている。お前は玉に使わさせられている。それだけ。だから捨てろ。」

「やだね。協力は無理そうだね?電話切るよ?」

「お前住所変わってないよな?」

「変わってないけどなんで?」

「いいよ、切れよ」

「来るなよ?」

「はいはい」

「……………………………………..」


–記事–

YYYY年M月D日 夕読新聞

「学生アパートで死亡。トラブルによる殺人か」

県警によると事件は午前2時頃に発生。「アパートの隣で大声でトラブルがあった」との110番通報があり、大学二年生の●田×郎さんが室内で死亡しているのが見つかった。7畳の部屋の中央付近にうつぶせのような状態で倒れていた。首には強く絞めた跡があり、首の圧迫による窒息が死因とされた。血液検査の結果から、高校の頃の同級生だった●島×太(19)さんが容疑者としてあがり、現在身柄を拘束している。


–会話–

「頼む返してくれ、それがないと気がおかしくなるんだ。やめてくれ。ここから出してくれ。返してくれ。ダメなんだよ。それがないと。頼む。返せ。返せ。頼む。死んじまうよ。狂っちまう。返してくれよ。」

「捜査で色々わかったんだけど、結構仲のいい友達だったんだろ?そいつを殺してもいいほどこの玉が大事だったのか?」

「うるさい!黙れ!返せよ!早く!お前も殺すぞ!」

「うーん、話を聞かないなぁ、君は、こりゃあ裁判に連れていける状態じゃないぞ。」

「裁判なんてどうでもいい!もういいから返して!返さないんだったらいっそ殺してくれ!死んじまう!ああ!早くしろ!どっちかにしろ!」

「とりあえず、留置所、うつってもらうから。ね。落ち着いたらまたお話しよう。」

「やだ。やだ。殺してくれ、殺せ。殺せ。」

「……………………………………………….」

「いやー、しかし、この玉、触ってて癖になるな。持って帰ってもバレないかな・・・。」


テーマ:ゲーム、動画サイトで私生活に問題を起こすほど時間を浪費する人